RPAが得意な作業―できることとできないことを解説

2020.11.13

2021.1.29

現在、日本では人口の減少が問題視されており、それにともなって国内企業の多くは慢性的な人材不足に悩まされています。しかし、人手不足によって生産性が伸び悩んでいる企業でも、RPAを導入することで人材不足がカバーされ、業務の効率化が期待できると考えられています。

RPAは優れたツールであることから万能だと思われがちですが、実際のところRPAには、人間に代わって進められる業務と、対応することができない苦手分野の業務があるのです。そのため、RPAを導入する場合には、RPAの得意・不得意をしっかりと把握したうえで活用することが大切です。

そこで今回は、RPAが得意な作業や、RPAにできることできないことを解説します。

RPAが得意なこと

冒頭でもお伝えしたように、RPAはどのような業務でも自動化できる万能のツールではありません。RPAが得意なことは、繰り返し行なわれる単純作業です。これを基本に、この項目ではRPAの得意分野についてさらに詳しく見ていきましょう。

ルールが決まっている作業

RPAは自分で考えたうえで最適な判断を下せるタイプのロボットではありません。ただし、ルールさえ決まっていれば、作業をミスなく24時間継続的に行なうことができます。これは、RPAの最大の強みといえるでしょう。

それとは逆に、臨機応変な判断を必要とする業務はRPAには適しているとはいえません。

ここでいうルールとは、業務フローや一つひとつの業務における細かな手順のことを指します。RPAは、指示された内容についてはミスなく効率的に業務をこなすことができるという特徴があるので、ルールをRPAに的確に指示さえできれば、時間や手間のかかる定型業務の効率化が劇的に進むといってもよいでしょう。

また、ルールが決まっていると、RPAの開発がしやすいというメリットもあります。RPAに関しては、企業で「導入しよう」と決めたからといって、即日活用できるというものではありません。RPAを導入する際には、運用に向けて段階的に準備を進めていく必要があります。

RPAの導入を決めたら、次はシステム開発の段階に移ります。このとき、RPAを導入する目的を明確にしたうえで、RPAを適用する業務と、今後も人間が行なう業務とを区別していくことがポイントです。

RPAに指示する業務の洗い出しの際は、その業務が定型的にできる作業かどうかを判断基準の一つとして整理するとよいでしょう。例えば、請求書の作成や、発注・納品時の処理といった業務はある程度ルールが決まっている作業であるため、RPAへ指示を出すのに適した業務といえるでしょう。

繰り返しの回数や頻度が多い作業

繰り返しの多い作業や、処理や取引が頻繁に行なわれるような作業は、RPAの得意分野です。例えば、メールの送受信や顧客情報のリストアップといった作業は、RPAに任せて代行してもらうことができます。

RPAが繰り返しや頻度の多い作業を得意としている理由は、あらかじめルールを設定すればRPAはそのルールに従って決まった作業を継続することが可能だからです。RPAで業務を自動化する際は、まず対象となる業務をシナリオ化し、作成されたシナリオに基づいてRPAが作業を進めていきます。RPAの活用においては、この“業務のシナリオ化”がルールということになります。

RPAは自ら考えて判断することはできませんが、作業の時間や回数といったルールを指定することで作業を自動化し、ミスなく結果を出すことができるのです。

RPAが物事を認識する仕組みには、UI(User Interface)認識やファイル認識、画像認識などいくつか種類があり、それぞれ正確性が異なります。

そのため、RPAツール開発の際には、より安定的な認識方法を選ぶことがポイントです。

ただし、最適だと思って選んだ認識方法でも、実際に使ってみると正常に作動しないこともあります。このような場合にはメンテナンスを行ない、認識方法を見直す必要があるでしょう。

加えて、利用中のシステムアップデートや作業手順の変更などがあった場合は、シナリオを作成し直さなければなりません。RPAは、ルールに間違いがあったとしても、修正を加えない限り、一度指示したルールに従ってそのまま作業を続けてしまうという特徴があります。ミスを防ぎ、効率的に作業を進めていくためにも、定期的なシナリオの見直しは欠かせません。

RPAの認識方法が適切であれば、一度設定すればミスなく何回でも業務をこなすというメリットがあります。データ入力やコピー&ペースト業務、インターネット上の口コミ収集などの業務は繰り返し行なわれるRPAの得意とする作業なので、RPAの導入で飛躍的な業務の効率化が見込めるでしょう。

RPAでできること

前項で解説したように、RPAはあらかじめルールが決まっている作業や繰り返しの作業、高頻度の作業を得意としています。ここからは、RPAが代行できる業務を具体的に6点紹介します。

請求書の発行などのメール業務

請求書の発行やメールの作成・送受信を人の手で行なうと、かなりの時間と労力がかかります。しかし、これらは高頻度で繰り返しの多い定型作業なので、まさにRPAの得意分野です。

請求書の発行などのメール業務は毎月定期的に発生する単純な作業であるものの、特にミスを避けたい業務です。RPAの活用でメール業務を自動化すれば、時間と労力を省けるだけでなく、宛名が違うといったミスも防げるようになります。

業務レポートの作成

日々の業務の定型レポート作成は、営業やマーケティング部署などで行なわれることが多い業務の一つです。あらゆる定型業務のなかでも、レポート作成は多くの社員が時間をかけて行なっている業務といえるでしょう。

レポートを作成する際には、受注状況や取引先のリスク管理、勤怠管理など、あらゆる情報を記載します。作成したレポートは、プロモーション施策の検討や現状の分析などに役立てられるので、記載する情報には正確さが必要です。

記載する情報量が多いほど作成時間もかかるため、RPAでレポート作成を自動化するのが便利です。導入するツール次第ではマクロを使った計算もできるので、時間のロスを防ぎ、人的コストの削減にもつながるでしょう。

データの簡易管理

顧客に入力してもらったデータを適切に管理するため、企業の既定のフォーマットに入力し直すといったデータの簡易管理も、RPAの得意とするところです。さらに、RPAにデータの管理を代行させると、社外システムへの入力も可能になります。

コールセンターの補助

RPAは電話やメールのサポート業務も代行できます。企業によってはコールセンターへの問い合わせ件数が非常に多く、特定の人間だけが情報を管理するのは非常に難しいという問題があります。

次の項目でも解説しますが、RPAは自分で考えて判断するといった高度な作業はできません。

コールセンターのオペレーターは一人ひとり顧客対応を行ない、その都度高度な判断をしているので、定型作業の得意なRPAは導入が難しいと考える方は少なくないでしょう。

しかし、RPAにコールセンターの補助を任せることができます。オペレーターの仕事を100%代行させることはできませんが、問い合わせの件数や内容の転記といった作業をRPAに任せることでオペレーターの負担軽減が可能です。また、顧客ごとの明細の作成を自動化することで、引継ぎの簡略化なども実現するでしょう。

ネット上の情報収集

RPAを導入すると、インターネット上の情報収集も効率的にできるようになります。例えば、マーケティングの部署では、自社が扱っている商品の口コミや評価などの情報収集が不可欠です。これらの情報はインターネット上にも無数にあるので、人の手で一つひとつの情報を収集し、まとめていくのはとても大変な作業です。

しかし、RPAを導入すると、自社商品の口コミや競合商品の検索を自動化してくれるというメリットがあります。

システム管理

RPAは、サービスの定期メンテナンスやトラブル時の調査といったシステム管理にも使えます。RPAを導入した場合、指示さえ出していれば24時間システム管理ができるので、担当者がその場にいないときでも対応可能です。

RPAでできないこと:「自分で考えること」

RPAは非常に便利なツールで、ルーティンワークをスピーディーかつ正確にこなすことができますが、できないことや苦手分野も存在します。

RPAのできないことは、自ら考えて判断を下し、行動することです。加えて、何らかのトラブルが発生した場合でも、自己判断をして処理することはできません。

RPAはあらかじめ作成されたシナリオに基づいて動いています。このことからもわかるように、あくまでも事前に指示されたルールに従って情報を処理することしかできないのです。

RPAはAIと混同されることも多いですが、AIと大きく異なる点はこの“自ら学習して最適解を見つけること”だといえるでしょう。

RPAは、まだ人間が行なう業務のすべてを代行することができず、万能ではありません。しかし、将来的にはRPAが対応できることや得意分野の幅が増えるのではないかという見方もあります。RPAとAIとの組み合わせで、非定型の業務であってもサポートできるのではないかと予測をしている人もいるのです。

RPAは指示したルールを忠実に守って情報を処理しますが、そこにAIを併用することによって、さらなる付加価値が生まれることは間違いないといえるでしょう。

できることを把握して導入しよう

RPAは基本的に、メールの送受信や請求書の作成など、ルールが明確で定型化した作業を得意としていますが、自ら考えて最適解を見つけることはできないため、トラブル対応や臨機応変な判断が必要とされる作業には適していません。

このように、RPAは万能ではないため、ツールを導入してもできること・できないことがあります。RPAの導入を検討する際には、業務の効率化を実現し、人件費の削減や長時間労働の是正、人材不足をカバーすることなど、RPA導入により達成したい何らかの目的がそれぞれの会社にあるでしょう。

RPAができること・できないことを踏まえて、それらの目的を達成できるのかどうかをしっかり検討することが大切です。

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