中小企業とRPA!その実態と導入事例を解説

2020.11.17

2021.1.29

働き方改革が推進されている昨今、業界や企業の規模を問わず業務の効率化と生産性の向上が求められています。業務の効率化を図るためにはRPAの導入が有効ですが、実際に導入しているのは大企業が多く、中小企業では目立つ事例が少ないのが現状です。

この記事では、中小企業が抱える課題とRPA導入が進まない理由を解説します。また、こうした中小企業の実態とともに、RPAの導入で成果を上げている中小企業の事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

RPAを導入しているのはほとんどが大企業

RPAは、事務作業の多い金融業界が先行して導入してから、あらゆる業界に浸透しはじめています。といっても、実際のところRPAを導入しているのはほとんどが大企業です。株式会社MM総研が調査した、企業規模別のRPAツール利用率のデータを見ると、大企業では約4割の企業がRPA導入済み、導入検討中を含めると約7割がRPA導入に前向きという結果となりました。

一方、中小企業はRPAの導入に消極的で、同調査では、RPAに前向きな意見を持っている中小企業はわずか1.5割程度というデータが出ています。中小企業は国内の企業の9割以上を占めていることもあり、中小企業でのIT化や設備導入による省力化が進まないという実情は、国全体の生産性に与える影響も大きいといえるでしょう。

中小企業でRPA導入が進まない理由

中小企業でRPA導入が進まない理由としては、以下の4つが考えられます

予算不足

中小企業がIT化を図るとき、課題となるのが予算です。実際に中小企業庁の調査では、IT利用の課題として「コストが負担できない」「導入の効果がわからない」といった、予算やコストに関する回答が最も比率が高い結果になりました。

RPAツールは年間数十万~数百万円かかるものが多く、既存のハードウェアがRPAに対応していなければ、新たに購入する必要があります。中長期的に見れば、RPAはコストメリットが大きいと理解はできるものの、初期費用の予算の確保が厳しいという理由でRPA導入を諦めてしまう中小企業も少なくありません。 

投資対効果が悪いように見える

大企業は業務の量や種類が多く、それぞれきちんと振り分けられていることもあり、RPAの効果が目に見えてわかりやすい傾向にあります。一方、中小企業の場合は、そもそも業務の種類が少なめで、効率化した分を別の業務に振り分けるといったこともあまり多くは見られません。そのため、RPAを導入しても、大きな投資対効果が得られにくいと判断されてしまうのです。

業務プロセスがきっちり分けられていないケースも多く、RPAの導入担当者が複雑なプロセスを把握できていないためにRPAを活用しづらいという課題もあるでしょう。

非効率な業務の洗い出しと通常業務を並行してこなすのは負担が大きいため、期待した効果が得られなければ、労力や費用が無駄になったように思えてしまうのです。

人材不足

RPA導入に消極的な理由としては、高度なITリテラシーを持つ人材の不足も挙げられます。

RPAは誰でも使えるツールですが、導入時やメンテナンスには、ある程度のIT知識が欠かせません。

中小企業には、大企業のように社内システムを管理する部署がない場合が多く、導入や運用を任せられる人材がいないことが、RPA導入にうまくつながらないのです。 

少子高齢化によって人材不足はより深刻化すると考えられており、実際に理工系の学生数も足りないとされています。さらに、「ITリテラシーの高い人材」という条件が加わると、より人材確保が難しくなる可能性もあるでしょう。

RPAを知らない

中小企業庁によると、2017年の調査でRPAを認知している割合は、有効回答約4,000に対して59.3%でした。AIの認知率は95.1%、ビッグデータの認知率は81.5%という数字と比較すると、知名度にかなりの差があります。

中小企業では、ITシステムを管理する独立した部門が少なく、IT関連の新しい情報を現場でキャッチできていないのが現状なのです。

また、企業規模が小さくなるにつれて、経営者が情報収集する時間の確保が難しくなるという調査結果もあります。従業員から情報収集したり自分で調べたりしなくなる傾向もあるため、ITの動向や現場の実情を把握していなければ、アクセスしにくいツールかもしれません。

中小企業がRPAを導入するために必要なこと

ここでは、今後RPAを導入したいと考えている中小企業に向けて、導入の際のポイントを解説します。

業務フローの整理

RPAを導入するためには、事前準備が重要です。RPAはすべての業務に導入できるわけではなく、判断や創造性を必要とする作業には対応できません。まずはすべての業務を可視化し、どこをどう自動化できるかはっきりさせましょう。

一つの業務のなかにも、さまざまなタスクが組み合わさっています。それぞれのタスクの順序やどのような関係性で行なわれているのかを整理しながら、業務の最小単位まで細かく分類していきます。タスクを洗い出したら、業務の開始から終了までを一連の流れとして整理しましょう。

業務フローを整理することでRPAの効果が出やすい業務を特定でき、企業全体の投資対効果を高めることにもつながります。

ベンダーの選定

RPAを導入しても、ITスキルが低い人が担当になると業務が滞る可能性がありえます。

RPAの業界では、導入前にトライアルサービスを提供するベンダーや、教育コンテンツが付属している製品が増えてきました。これらを利用することで、RPAの基礎的な知識を事前に学べるうえに、製品情報だけではわからない使用感もつかめます。

また、導入後のサポートも重要です。RPA製品と自社業務の相性が良くても、教育的なサポートがないとRPAの効果が最大限に発揮されません。研修やセミナーなどの学習環境が整っていて、運用の相談ができるベンダーを選ぶことで、RPA担当者のスキルがアップしやすくなります。全体の業務効率化もスピードアップするでしょう。

スモールスタートでの導入

最近は、より低価格のRPA製品が登場しています。まずはスモールスタートで、安価なツールを導入するのがおすすめです。

いきなり大規模なRPAを導入するのではなく、まずは作業時間が1分~30分程度の身近な業務を対象にRPAを導入し、現場の担当者数名で動かしていくのがよいでしょう。RPAでの業務効率化の様子を見てもらえれば、興味を持つ社員が少しずつ増えていきます。成果が出たら、次は10分~60分程度かかる業務に導入しましょう。部署を超えて「うちの業務にも使えるかも」という気付きが生まれれば、企業全体への展開も可能になります。

初期のうちに小さな結果を出す「アーリースモールサクセス」を意識することで、社員の理解を得られやすい土壌を作れるでしょう。

中小企業のRPA導入事例 

ここでは、実際にRPAを導入した中小企業で成果を出した事例をご紹介します。どういった業務で成果が出やすいのか、RPA導入の参考にしてみてください。

業務時間の大幅な短縮に成功 

A電機株式会社では定時退社を推奨していたものの、実際には残業時間が思うように削減できず、目標を達成できていないのが課題でした。 そこで、手厚いサポートが付いたRPAツール導入を検討し、必要最小限の機能がそろっている製品を選定しました。

A電機株式会社はまず、総務担当の業務から自動化に取り組みます。就業管理でメールの送受信を利用していた部分をRPAで効率化し、結果、業務時間を月間140時間以上短縮でき、定時退社が実現したのです。

その後、顧客が絡む業務でもRPAを展開していきました。納期の問い合わせに対する回答や、請求書送信などを自動化したことで、月間90時間以上の削減にも成功しました。

人員の効率的配置 

B工房では、受発注の管理で一日あたり250~300あるデータを人の手で処理しており、ある受発注担当者はその作業に一日5時間ほどかかっていました。その担当者の人事異動が決まっていたため後任の採用を考えましたが、代わりにRPAの導入を検討。無料トライアルやベンダーの研修がある製品を選ぶことにしました。

結果、一日5時間かかっていた業務のうち、3~4時間分をRPAで自動化できるようになり、人が作業する時間が短縮されました。業務フローを見直すなかで、作業の無駄やストレス、繁忙期と閑散期の差を明確にできたことで、効率的な人員配置が可能になったのです。

商品の素早い仕入れに成功

B商社では、ECサイト上で最適な商品を迅速に探し出し、タイミングよく仕入れを行なうことが課題でした。人が商品検索を行なう場合、勤務時間の都合上一日8時間が限度のため、すべてのWebサイトを漏れなくチェックすることは不可能で、夜間や勤務時間外の対応ができない事態が発生します。

そこでRPAを導入し、複数のWebサイトへのログインと商品検索を自動化した結果、24時間365日稼働のロボットのおかげで、サイトをくまなくチェックできるようになりました。また、条件に合う商品を発見したら仕入れ担当者にメールが届くように設定することで、即時対応も可能になっています。仕入れ業務の時間を短縮できた分、担当者は発注交渉に集中できるようになったこともあり、大きな収益向上につながりました。

中小企業こそRPA導入で生産性向上を!

RPAを導入するポイントとして、開発が簡単なツールの選定、サポートが充実したベンダーやパートナーの選定、スモールスタートの3つを意識することが大切です。

小さく始め徐々にRPAで適応できる範囲を広げていくことで、無理なくRPAの導入ができ、成功する確率も上がります。また、サポートが充実しているベンダーを選ぶことで、よりスムーズに導入でき、社内での運用効率もあがるでしょう。

人材不足の課題解消や、生産性向上が急務となっている中小企業にこそ、RPA導入が役に立ちます。ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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